香港 2014秋―雨傘革命編―

会えば会うほど好きになる、離れてもいつも心に貴方がいる。そう、貴方は香る港、香港。


正月の香港旅行のせいで、どうにも火が付いてしまった。香港を想いながら春と夏を過ごし、そして秋がきた。9月の連休に、再び来港。私が香港に到着したその日にどうやら学生デモが始まったらしい。私はいつものように、地下鉄に乗り、街を歩き、蝦雲呑麺を食べ、青菜をつまみ、スターフェリーにのり、パシフィックコーヒーで一休み、店をひやかし、蝦雲呑麺を食べ、青菜をつまみ、、スターフェリーにのり、夜景を眺め、地下鉄に乗り、街を歩き、ホテルで爆睡、それを3回繰り返した。それだけで、毎回毎回、なんだか不思議と私の身体はプラスのパワーで満たされる。

帰国後、デモの理由を知る。中国の魔の手が香港にせまっているのを知って愕然とする。あの私の愛する香港が無くなってしまうのか、、、、ハラハラしながら、毎晩ネット生中継を見つめ続ける日が続いている。香港の街では道路を占拠する学生や市民達が日を追うごとに増えていった。

デモが始まって1週間位たった頃だろうか、道路を占拠するデモ参加者がかなりの規模になってきたある晩、警官はデモ隊達に催涙弾を投げ、唐辛子スプレーを噴射した。学生達はそれに対して、見事なまでの冷静さで対処した。大勢の学生達が(抵抗しません、という意味で)両手を上げ、警官に立ち向かっていった。警官は学生達の無抵抗の気迫に圧倒され、後ずさり。私は涙を流さずにいられなかった。あれだけの大勢の人数が(しかも皆若い)集まっても決して暴動にならない事にとても驚いた。道路を占拠しながらも立ち往生した車はちゃんと道をあけ通してあげたり、けが人が救護スペースに行けるよう通路をつくる。大勢集まっているのに秩序は乱れない。"教育"というものの素晴らしさを感じた。

デモが長引くにつれ、だんだんと組織だっていく様も見事だ。救急ステーションや、救援物資の供給ステーションがいつの間にやら出来ている。学生達は路上のごみを自主的に拾い、路上で勉強をし、路上で仰向けで寝る。また、英語や日本語、各国語で香港の生の情報をネットを使い、海外にリアルタイムで配信する。途中、あやしいデモ反対派の集団が突如登場して、色々な所でケンカをふっかけられるも、多くのデモ参加者達はその挑発に一切乗らず、ハッピバースデートゥーユー♪の大合唱という、素晴らしく清々しい方法で対決する。香港人達の賢さに脱帽である。

紆余曲折あり、やっと第一回目の政府と学生達の間の対話が先日行われたが、状況は何も変わらない。学生達の戦いの日はまだまだ続く。そんな中今日、香港から届いた一つのニュースに涙腺が緩んだ。香港の公務員約1300人が、匿名で民主派の抗議デモ活動を支持する異例の「意見広告」を地元紙に掲載したとのこと。公務員であれば自動的に政府側につかざるを得ないはずだが、実情は学生を支持している公務員が多く潜んでいるということだ。何とも嬉しい驚きだ。数奇な歴史をたどった香港の運命がこの先、どうなるのか、、、。この歴史に残るであろうこの素晴らしいデモ活動で、真の普通選挙を勝ち取ってほしい、と切に思う。

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 10/14号 [香港と天安門]

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 10/14号 [香港と天安門]